スタッフブログ

補聴器の相談に来店する方は、様々な希望や不安を抱えています。

皆さんが何に困っていて、相談の結果、どうしたのかまとめています、補聴器選びの参考にしていただけたらと思います。

補聴器相談記録 事例.4 80代 女性 Sさんの場合

 

お耳の状況      

初回の来店はご主人と一緒でした、随分前から(10年以上?)聞こえが悪かったそうです。ご主人のお話では呼び掛けても返事をしない、TVの音が大き過ぎて困っている、近所に住む娘さんがお孫さんと一緒に遊びに来た際にも話が聞こえていないと心配しているそうです。

今回、いよいよ耳鼻咽喉科を受診したところ加齢による難聴と診断を受けて紹介状を持って来店いただきました。

 

相談内容

ご本人に話を聞いてみると、若い頃と比べると確かに聞こえにくくなってはいるが、話がわからない訳ではないし、お孫さんが早口で話すと聞き取れないこともあるが、それほど困ってはいないということです。

病院では補聴器の試聴を勧められ紹介状を出してもらったが自分としてはまだ必要ないと感じているそうです。

 

初回の相談

病院からの紹介状には右のグラフのように聴力の状況が記載されていました。

両耳とも甲高い音ほど聞こえにくくなっており、日常生活で聞き間違えや、聞こえにくい音が出てくる聴力です。小さな声での会話や体温計の電子音は特に聞きにくい状況だと思われます。

ご本人の見えない小さな機種にしたいという希望で、小型の耳掛け型で聴力のデータを基にSさんの聴力に合わせた音を作ります。

初めての補聴器と伺っていましたので、初心者用の音量を抑えた調整で試聴していただきましたがご本人の感想は「うるさい、自分の声が大きい、サーと音が聞える」と非常に厳しいものでした。

 

うるさいというのは良くわかります、聞こえにくい状態で長期間過ごしていると音が小さく聞こえることに慣れてしまいます。若い頃は補聴器を入れた音量よりも大きく聞こえていましたが、うるさいとは思わなかったはずです。聴力が低下した状況が普通になってしまうと、急に音が増えるとうるさく感じてしまいます。

聞こえにくいということは、自分の声も小さく聞こえています。今までと同じ加減で声を出すと自分の声も補聴器で増幅されるので大きく感じてしまいます。

サーという音が聞えるというのは、お店の冷房の音でした。エアコンから冷風が噴き出している音で、冷房を止めると音が止まり静かになったそうです。健聴の方はエアコンの音も外を走る車の音も聞こえていますが、あまり気になりません。日々の生活の中で常に聞こえる音なので、余程大きな音か意識を向けないとうるさいとは感じないのですが、難聴の方は今まで聞こえなかった音が急に聞えるととても気になる音に感じてしまいます。

このままでは『うるさい』が先に立ち、使ってみようという気持ちにならないので、初心者用の設定から更に音量を下げます、改善の度合いは減少するもののまずは補聴器を耳に入れる感覚と、今までよりも色々な音が聞えてくる環境を体験していただくことにしました。

 

初心者用の音から更に下げた調整であること。

それでも今まで聞こえなかった生活音が聞えるようになること。

抑えているものの、自分の声・水の音・食器の音は特に大きく感じること。

聞こえることに慣れる必要があるので、まず1日3時間、自宅で練習して欲しいこと。

音に慣れてきたら、徐々に音量を上げて時間を延ばして聞き取りを上げていくこと。

補聴器で聞く練習を積むことで、様々な音が聞える環境に慣れる必要がある

 

をお伝えし1週間、ご自宅で使ってみていただくことにしました。

 

2回目の相談       

1週間後、ご予約の時間にSさんが来店しました。感想を伺うと「自宅で使うと時計の音や換気扇の音、歩くと絨毯が擦れる音が聞えてきた、食器を洗うとガチャガチャとうるさい、これではとても使えない」と補聴器は返却になりました。

お帰りになった後、補聴器の使用状況を確認してみると一日平均の使用時間は1時間20分と表示されています、あまり使っていただけなかった様子です。

 

最後に

今回は随分と弱めの音量での貸出にしましたが、それでもうるさいと感じ、補聴器を使わないという決定となりました。

本来であれば、今まで聞こえなかった様々な生活音が聞こえる様になるのは良いことです。静かだと思っていた自宅でも様々な音がしていたことを驚きとともに嬉しそうにお話してくれる方もいらっしゃいます。

反面、聞こえにくい期間が長い方ほど今までの音環境が変わることに拒否感を感じてしまいます。音が小さい方が、聞こえる音が少ない方が楽に感じてしまうのです。

今回はご主人や娘さんは心配していましたが、Sさんのようにご本人が困っていない、まだ聞こえていると感じている場合にはうるさい思いをしてまで補聴器に取り組む必要性が感じられないのでしょう。

「今後、聞こえにくくて困るようになりましたら、また改めてご相談に来て下さい。」とお伝えしましたが、今以上に音の聞こえが下がり、言葉の聞き取りが低下してから補聴器を使うには今回以上に強い違和感が出ると思います。

 聴力の低下は少しずつ進むため、自分では気がつかない場合も多いのです。『聞こえにくい』をそのままにした場合、考えられるのはコミュニケーションの減少です。言葉が聞き取りにくい、会話がしにくい、大きな声で話さないといけない。本人にとっても周囲の人にとってもそれはストレスになる可能性があります。そのことを面倒だと思うと無意識に会話を避けてしまうかもしれません。その結果、人間関係の悪化であったり外出が減ってしまったりと、『コミュニケーションの減少』を招く悪循環が生まれてしまうのです。

補聴器を使えるようになる為にはご本人の意欲と練習が必要です。家族の会話の輪に入るというのが意欲に繋がる方もいれば、お友達とお話をする際に何度も聞き返しをしたくない、話がわからずに一緒に笑えないのが嫌だと頑張れる方もいます。

 

最近だと、電子体温計を使う機会も多いのではないでしょうか?

『ピピピッ』というお知らせ音は聞こえていますか?

聴力の低下を感じたら、「まだ大丈夫」と思わずに早めの対処を心がけましょう。

必要な方へは当店からも耳鼻咽喉科の『補聴器相談医』への紹介状を出しています、大切なのは聞こえにくさを感じたまま放置しないことです。