音は聞こえるのに話がわからない……

補聴器の相談を受けていると、相談者のこんな一言で一緒に来店したご家族が「えっ!」と驚く場面がよくあります。
「聞こえているけれど、話の内容がわからないことがある……」
ご家族は、聞こえているのにわからないってどういうことだろう……と心配になります。それは『聞こえる=わかる』のが当然だと思っているからで、実は『聞こえる』と『わかる』はちょっと違います。

『語音明瞭度』とは

補聴器で音を上げることで聞えるようになり、話がとても良くわかるようになるお客様がいます。反面、音が聞えるようになったのに、話の内容がわからないと言うお客様もいます。この違いは言葉の聞き取り能力に差がある場合に多く見られます。
言葉の聞き取りやすさは『語音明瞭度』と言われ、測定する場合には「ア」「キ」「シ」「タ」というように一音ずつの“単音”を使います。録音された音声をヘッドホンから一定の速度で流し正しく聞き取れている割合を測定します。音の大きさを変えながら最も正答率の高い音量の語音明瞭度を『最高語音明瞭度』(または『語音弁別能』)といいパーセント(%)で表します。
この数字は補聴器を使用した場合どの程度効果が期待できるかの目安になります。また補聴器を両耳にするべきか?片耳にするべきか?片耳ならどちらの耳にするべきかという判断材料としても参考にします。
音の聞こえが同じくらいの方でも、最高語音明瞭度に差がある場合、補聴器を使った際の言葉の聞き取りの改善に差が出ます。

『聴力』と『語音明瞭度』

聴力のグラフ

補聴器のホンネで知りたい話の前回、『補聴器の効果を知る方法』の中で例に出した上記の聴力の方が語音明瞭度を測定したところ下記のような結果でした

表の右側にあるdBの欄の数字は音の大きさです。20個の音声を出して正解は 答えられないが× 間違えた場合は間違えた音を表記し正答率を%で記載しています。

この方の右耳60dBの音量では25%正答率という結果でした、第2表・第3表と進むと70dB・80dBと音量が上がり35%・60%正答率も上がっていきます。
第4表で90dBに音量が上がると、今度は正答率55%に下がってしまいました。これは音が大き過ぎて聞きにくくなっている状態です。 これを右耳左耳それぞれ測定し、最も正答率が高い音量が最高語音明瞭度で、今回、右耳は赤丸左耳は青丸で囲みました。
この方の最高語音明瞭度は右耳~80dBで60% 左耳~80dBで70%となります。
因みに、健聴な方の最高語音明瞭度は40dBの音量で100%の聞き取りが可能で、正常語音明瞭度曲線で表されます。

は補聴器を使わない右耳、×は補聴器を使わない左耳をヘッドホンで測定した語音瞭度をグラフにしたものです、60dBの音量では右耳は25% 左耳は30%の正答率ですが、80dBに音量を上げることで右耳は60% 左耳は70%の正答率まで改善できるという目安になります。
私達が普通に会話をする場合の音量は60㏈位です。今回の例では60dBでは聞き間違いが多くなってしまうので補聴器で音量を上げて80dB位に増幅することで最も聞き取りが良くなります。

補聴器でどこまで聞き取れるようになる?

少し難しい話になりましたが、ここまで読んだ方はこんな疑問が浮かんでいるのでは……

『あれ?補聴器を使っても言葉の聞き取りは100%にならないの?』

そうです、今回のケースでは100%にならないのです。語音明瞭度はどの位、言葉を正しく認識できるかの測定です。これが低下してしまうと耳から入ってきた言葉を正しく認識できないため音量を上げても話の内容を理解することが難しくなります。
左右の耳が補い合うことで最高語音明瞭度よりも若干、良い結果がでることもありますが最高語音明瞭度が70%の方の場合、補聴器を使い普通に会話をする音量で70%の聞き取りができることを目指します。
今回の例と同じ聴力(音の聞こえ方)でも、最高語音明瞭度が90%・100%と出る方は同じ補聴器を使用してもより高い聞き取りの改善が見込まれます。
逆に最高語音明瞭度が30%・40%と低い場合には補聴器を使っても音は聞こえる様になるものの、言葉の聞き取りは期待ほど上がらない場合もあります。状況によっては補聴器の使用をお勧めしないケースもあります。
聴力と語音明瞭度が大きく低下してしまう前に補聴器の練習を始めて、必要な音量をしっかりと入れることで『音が聞える』と『言葉がわかる』両方の改善が期待できます。

『音場』で行う効果測定

補聴器を使って語音明瞭度がどの位改善するかは『音場』と言われる空間で測定します。
『音場』とは正しく補聴器の効果測定を行うために、設定された音量で聞こえるよう音の校正を行った部屋です。この設備を設置することは公益財団法人テクノエイド協会が認定している『認定補聴器専門店』の要件にもなっています。

上の表は
は補聴器を使用した右耳、は補聴器を使用した左耳を表しており、音場で語音明瞭度を測定し理想通りに効果が出た場合のグラフです。
通常、言葉の聞き取りについては補聴器を使って60dBという普通に会話をする時の音量で最高語音明瞭度±10で聞き取れるように目標を設定します。
60dBの音量での聞き取りで比較すると、右耳25%→60%に改善、左耳×30%→70%に正答率が向上しており、最高語音明瞭度をクリアしているのが解ります。

補聴器を使うと、どの位効果がありますか?

今回のケースでは「補聴器を使うと、どの位効果がありますか?」と聞かれたなら、「苦手な音については多少の聞き間違えは残ると思いますが、補聴器をしていない時と比べると言葉の聞き取りが向上しますので、大きな声を出さなくてもお話できるようになりますし、テレビの音量も下がると思います。」というご説明になります。

補聴器の練習は『脳』のリハビリです。もう一度、言葉がわかる音量に慣れるためには前向きな気持ちで補聴器に取り組み、いろいろな環境での聞こえを確認しながら調整を重ねることで少しずつ慣れていき、本当に自分に合った聞こえになっていきます。

多くの方が『私が補聴器を使えるだろうか……』という不安な気持と『補聴器を使うと、聞こえるようになるかも……』という期待をもって来店します。
E・テラスでは、面談とカウンセリングを通して補聴器で改善する部分も改善が難しい部分もしっかりとご説明した上で、使用者のペースに合わせて音量・音質の調整を行い、補聴器を上手に・快適に使えるようサポートさせていただきます。
きこえや補聴器に関する不安や疑問がありましたら、お気軽にご相談ください。

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